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PURE

1998 年12月公演

GIFT

◆1998年12月10日〜13日まで
銀座小劇場にて

スタッフ

【作】夢野さくら
【演出】咲野俊介
【照明】芳賀隆幸
【音響】神尾美穂
【装置】奥田有美
【舞台監督】阿部一郎
【宣伝美術】小室千恵子・阿部郁子
【制作】柳坂明彦・大津桂子・原田直樹
【協力】劇団青年座・一期舎

キャスト

  • 杉山彩子
    「栗山 環」役
    杉山彩子
    (--)
  • 岩尾万太郎
    「栗山 三太」役
    岩尾万太郎
    (俳協)
  • 納見俊三千
    「佐々木 浩」役
    納見俊三千
    (--)
  • 池上リョヲマ
    「関口 正広」役
    池上リョヲマ
    (オフィス高木)
  •  長谷川あゆ
    「河原 明美」役
    長谷川あゆ
    (--)

ストーリー

Chapter1

栗山環(杉山彩子)と三太(岩尾万太郎)は新婚4ヶ月目の幼馴染みカップル。 実はこの2人、幼馴染みであった事が災いし、今だかつてキスさえした事がない! ある日環は、やはりこのままではまずいと考え、スタミナ料理を作り出す。しかし彼女は信じられないほどの料理下手!ありえない材料を駆使し、自慢(?)料理を作り上げていく。
毎日毎日冗談のような料理を食べさせられる三太だったが、この日は環の決意を聞いて大喜び!「こういう事は決心が変わらないうちに!」と早速隣の部屋へ…。
すると突然、環とも親しい三太の友人、佐々木(納見俊三千)が尋ねてくる。追い返したい気持ちで一杯なのだがどうも上手く行かず、そのうえ今度は、隣の部屋に住む同棲中の女の子、明美(長谷川あゆ)までがやってきて、なぜか自分の家のようにくつろぎ出すはめに! 慌てる2人だったが、明美のラブラブ彼氏、正広(池上リョヲマ)の登場で、何とか追い出す事に成功!…と思ったのも束の間、テーブルの上には佐々木の忘れ物の携帯が一つ…。

シーン1シーン2

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:いやぁ…この作品は、本当にいろんな意味で心に残るものとなりましたねぇ。とにかく全ての事が初めて尽くし!脚本を書くのも初めてなら、舞台を自分たちで制作して上演するという事も初めて。そのうえこの作品だけ自分で演出しなかったので、自分の表したい事を、脚本だけで人に伝えるという難しさ…これを痛感した作品です。本当に辛かった…。
でも今では、これがあったから今の私があると思えるようになりました!

杉山彩子(主演):このあり得ない料理というのが、実は結構美味しかったのだ。色が真っ黒だったのを覚えている。イカ墨?この頃、私は初舞台の緊張のため、食欲不振からくる体力不足。おまけに物凄い汗っかき。 始まって5分ですでにヘロヘロ状態。だから、時々ポカをやってしまうのだが、ある日の公演では、佐々木君の飲むコーヒーカップに中身を入れ忘れ、佐々木君役の納見さんは、空のカップに砂糖を入れて美味しそうに飲んでいました。ははは。 かわいそー。

Chapter2

やっと皆を追い出し2人きりになれた環たち。急に恥ずかしくなり、昔話に花を咲かす。 三太は昔ジッポのライターを集めていたが、そのコレクションの中に、唯一環からのプレゼントのジッポだけがない。無くした事を責める環に、無くしてないと言い張る三太。
}} と!またまた突然、今度はパジャマ姿の明美が、興奮した様子で乱入!話を聞くと正広が浮気をしたと言うのだ。「そんな事はしていないという」正弘を前に、さらに興奮する明美。
そこに忘れた携帯を取りに戻ってきた佐々木までが登場。明美の興奮状態を見た佐々木は、唐突に一言、「明美ちゃん、もしかしておめでた?」 …シーンと静まり返る環たち。
実は明美は高校時代、付き合っていた同級生の子を妊娠した事があった。しかしその事を知った彼は、突然明美との距離を置き、自然消滅へ。たった一人で中絶をしなくてはならなかった明美の心は、最愛の人に自分の妊娠を言い出せないほど傷ついていたのだった…。

シーン3シーン4

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:私は妊娠した事がないので、その時の本当の心理状況というのは想像するしかないんですけど、出産した友達から「自分で自分がコントロール出来なくなる」という話を聞いていました。そしてやはり女である以上、どんな状況に置かれていたとしても、好きな人に自分の妊娠を喜んで貰えないと分かった時、どれほどの絶望感が襲うんだろう…なんていう事を考えながら、このシーンを書いた覚えがあります。

杉山彩子(主演)ジッポのライターといえば、どうも公演中、私の舌がまわらなくて、「デュポンのライター」と言ったらしい…。今でも私はそんなことは言って無い!とかたく信じているが、楽屋では「デュ、デュ、デュポン???」と大騒ぎだったそうだ。似たようなことで、「お待たせー」という台詞を「もまたせー」と言ったらしい…。何せ、殆ど二人芝居と言ってもいいほど台詞が多いから、間違わずに言える事事態少ないのよねー。

Chapter3

明美の結婚・妊娠に対する深すぎるほどの想いに、自分の心を見つめなおす環。「自分は本当にお兄ちゃん(三太)を好きなのか?お兄ちゃんは私をどう思っているのだろう…」
実は2人の結婚には、環の不倫問題が絡んでいた。会社の上司を好きになり、結婚を望んでいた環だったが、ある日突然上司から妻の妊娠を打ち明けられ、別れを告げられる。ショックのあまり三太に泣きつき、昔の小さな約束「30過ぎてもお互い1人だったら結婚しよう」を実行してしまった。自分は単にあの時の状況から逃げたかっただけなのかもしれない。セックスをしようと思ったのも、身体の関係さえ持てば何かが変わるかもしれないと思ったからだった。話を聞き、ショックを隠しきれない三太。「お前にとって、俺とのセックスってそんなもんだったのか?!毎晩不味い料理を食わされても、それでも帰ってくる俺の気持ち、少しも分かってないんだな!」…呆然とする環を置いて、三太は出て行った。

シーン5シーン6

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:ここでは、私の考える「男の格好良さ」というものを表現したかったんですよねぇ。男性の考える男の格好良さと女性の考えるそれは、大きく違っていると思うんです。
私は男の人の、「思いが強いあまり、つい出てしまった怒り」とか、「あまりの辛さに泣き崩れる様子」なんてものに、すっごく格好良さを感じる性質!しかし男の人にはなかなかその格好良さを分かってもらえない。やっぱり演出は自分でするもんだと思いました。

杉山彩子(主演):「30になっても、お互い1人だったら結婚しようか?」と親しい友人に言って、即効「やだよ」と言われた経験がある。冗談でも腹たつ!(笑) そんな私がこんな役を演じようとは…。しかし、本当にエッチしないで結婚なんて、お話の中でしか有り得んだろー!!!と思うでしょう?この話、実話がベースになっているのです。嘘のような本当のお話なんですよー。

Chapter4

たった一人残される環。突然の三太の苛立ちと怒りに、訳が分からず逆切れ状態の環。
そこに駅前の病院から1本の電話が入る。「旦那様が交通事故に遭われ重態です。すぐに保険証を持って、来て下さい!」突然降りかかってきたその言葉に、目の前が真っ暗になる環。
急いで保険証を探し回ると、引き出しの中から保険証と一緒に、なぜか環のプレゼントしたジッポが出てくる。途端環の心は、数年前のあの日に飛んでいた。 手術室前の待合席。環の父の手術に、血液が足りなくなっていたのだ。環も母も、父とは血液型が違う。その時事態を聞いて駆けつけた三太。「俺の血を使って下さい!いるだけ使って下さい!環大丈夫だ、おじさんは助かる。俺が付いてるから心配するな」
今、自分の前から消えようとしている三太を思った時、初めて環は、自分にとって一番大切な、かけがえのない人の存在に気付こうとしていた。

シーン7シーン8

Comment〜舞台裏秘話

夢野さくら:いつも近くにいる、本当に大切な人の存在って、普段はなかなか気付けないもんです。分かってはいても、あまりにも近すぎて、いるのが当たり前になってしまう。 結局このシーンでの病院からの電話は、間違いだって事になるんですけど、これが間違いじゃなく本当の事で、やっと大切な人だったって事に気付いて、でもその途端にいなくなってしまう…なんて事があったとしたら、これって相当恐ろしい事態ですよねぇ。

杉山彩子(主演):この電話のシーンで、気付くとコードレス電話の受話器を逆に持っていたという事がありました。シーンがシーンなので、ボケる訳にもいかず、何ごとも無かったかのように、元に戻しました。電話じゃ無いけど、インターフォンを取ったら、それが本体ごと壁から落下!というハプニングもあったっけなぁ〜。三太役のまんちゃんの機転で上手く笑いに転化出来たけど、焦った焦った。

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