裁判員制度とは
選挙権を持つ20歳以上の成人から、無作為に選ばれた裁判員6名と、 判事3名(裁判員4名と判事1名という場合もあり)の多数決によって (今回の「CHAIN CUTTER」では、全員一致の設定になっている) 裁判の有罪無罪を決定し、量刑までを決めるという新しい司法制度で、 2009年度からの施行を目指している。 裁判員に選出されたものは、国民の義務として、理由無くこれを回避する事は出来ず、 裁判員には守秘義務も生じ、違反したものには、罰金や懲役刑なども盛り込まれる。 裁判は大体1〜3日くらいで結審し、長くても一週間くらいで終わるよう調整される予定となっている。※この芝居上の裁判員制度の設定は、あくまでフィクションであり、 実際の裁判員制度とは違う場合があります。
ストーリー
Chapter1
平成22年11月某日。ここ東京地方裁判所第一評議室において、裁判員制度開始後初めてとなる殺人事件、『美人ダンサー実母殺人事件』の評議が始まろうとしていた。評決は全員一致と決まっているのだが、集まったのはこの制度に不満を抱く裁判官の面々と、無作為に選ばれてしまった素人裁判員たち。女を執拗に馬鹿にする裁判員1号三田健一や、そんな態度に腹を立て、どんな有力な証拠が出ても、三田と同じ意見にはしないと言い切る6号太田麻衣子など・・・。お互い初めての経験という事もあり、評議は最初から波乱の展開となっていく。裁判の争点は、被告に殺意があったかどうかという点。証人の三崎優香が、「確かに被告は、母親を追いかけて踊り場に行き、階段から突き落としていた」と証言した事、そして事件現場に、被告の物と思われるカッターナイフが落ちていた事から、事件は計画的に行われた可能性が高いと判断され、裁判員たちの意見は徐々に有罪へと傾いていく。
Chapter2
無罪側の6号岡本勇次は、被害者が事件当時着ていたカーディガンの「裾の毛糸」が、被告のしていた、何の飾りもないシンプルな指輪に絡んでいたという点が腑に落ちない。しかし2号須藤真澄に「被告の腰の部分に触れ、突き落とさない限り、毛糸は指輪に挟まりません」と言われてしまう。有罪の証拠はたくさんある、しかしどうしても確信が持てない勇次。それは証人の三崎優香が、被告のダンサーとしての才能を妬んでいたという事実があるからだ。被告を妬んでいた証人の意見を、そのまま信じていいものなのか?だが優香は、決定的ともいえる証言をしていた。それは被告が、長年に渡り母親から虐待を受けていたという事実だった。虐待をされていた事、そして当時付き合っていた彼のと結婚を反対された事、その事から、被告は被害者を恨んでいたに違いないと!しかし被告の保坂恵美里は、「私は母を心から愛していた。自分は彼から貰った大事なネックレスを母親に引きちぎられたので、それを取り戻そうとしただけ。殺そうと思った事は一度もない!」と明言していた。
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:真剣なシーンや普段言わないセリフの連続だったので、ほんのちょっとのセリフ間違いなどが爆笑の渦を招く稽古場だった。そのひとつで、美樹子役の奈良谷さんがゲップをするシーンがあった。実はあれ、奈良谷さんの代わりに剣持さんが音を出していた。でも音と動作が全く合わずそのせいで大爆笑の渦に……。もう稽古を続けられないほどの状態となり、その日の稽古は終了となりました。ゲップのせいで稽古終了って、一体どんな芝居だよ……。
杉山彩子(主演):別名ハンジーズと名付けられた判事達……。DVDの特典映像で、タイムボカンの3人衆「ドロンジョ、トンズラ、ボヤッキー」に似ていると言われていますが、まさにそんな感じ(笑)。毎年剣持さんはやってくれますが、今回はそれに加えて、コミカルなダンサーでもある柴田さん、初参加の『ピンクアメーバ』の美乃里ちゃんと、素晴しいトリオでした。いつもシリアスパートが多い私も、次はこちらに加わりたいと思いまぁ〜す。
Chapter3
3号加藤美樹子は、審理中から引っかかっていた事があった。それは証人が、検察官から証拠のネックレスを見せられた時、思わず目を細めた事、そして反対尋問中に目薬を差していた事だった。結果美樹子は、証人は目が悪くドライアイなのだと推理する。その意見を聞き、勇次にある考えが浮ぶ。あの指輪に糸が挟まる為には、突き落としたくらいじゃダメなのではないか?そうではなく、掴んだ!つまり被告は、階段から落ちそうになった被害者を助けようと、咄嗟に裾を掴んだのではないかと!評議室の空気が一気に無罪へと傾く。しかし健一は頑なに有罪を押し通す。それは女全般を憎んでいるからだった。実は5年前、6歳になる息子を交通事故で亡くし、事故を防げなかった妻を恨んでいた。子供を亡くした怒りと悲しみを妻にぶつける事で、耐え難い辛さに耐えていたのだ。しかし5号太田麻衣子の、「私の父も、命に代えて私を産んでくれた母の死を、全部私のせいした。あんたに父に愛されたかった私の気持ちが分かる?一番辛いのは奥さんなのよ!」という必死の言葉に、自分のしてきたあまりに理不尽な行動を後悔するのだった。
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:今回とても出演者が多く、殆どの人が出ずっぱりだったので、疲れきった役者さんから「何でこんな本書いたの?」と言われてしまった……。でも書き上がった時、「この本なら早替えもないし、転換もないし、誰からも文句言われないわぁ」と思ったのにぃ!それとこの7幕ラスト、健一役の山岡さんのコンタクトが、泣くと必ず外れてしまい、シーン終わりでいつも皆でコンタクトを探す羽目に!仕方がないので本番はメガネにして頂きました(笑)
杉山彩子(主演):麻衣子ちゃんの佳境でもある7幕はホント時間をかけて稽古しました。なんたって20分以上もある長いシーンなんですよ。山岡さんと知美ちゃんは何度も特打ちという名の抜き稽古をやりました。その日は他のキャストの方達はお休みなんて事も多々あり、皆さんは結構お休みも多い稽古状態でした。でも、特打ちされた二人はきつかったでしょうねぇ〜。何度やっても演出家のオッケーが出ないんですから!でも本番では稽古のかいあって、なかなか盛り上がりました。
Chapter4
有罪は2号須藤真澄ただ一人となった。カウンセラーをしている6号岡本勇次は、カッターは凶器ではなくリストカット用だったのではと分析。しかし真澄はそれに反論。だとしたら、何故ショーの後、ダンス衣装を着たまま持っていたのか?殺すつもりだから持っていたと考える方が妥当ではないか。すると勇次は、カッターは被告のお守りだったのではないかと言う。なぜならリストカットは死ぬ為ではなく生きる為にするもの、だからこれさえあれば生きている実感が湧くたったひとつのものだったのではないかと。それに対し真澄は、「殺したとか殺してないとか関係ない」と強弁に言い募る。実は真澄も母親からの虐待を受け、それを自分の娘に繰り返していたのだ。「子供は母親の言う通りに生きていくもの!彼女は母親を裏切り男を取ろうとした。だから罪を償うべき!」との真澄に、「ここはあなたの人生を正当化する場所ではない。繋げちゃいけない鎖は断ち切るべきだ」と答える勇次。人生には、切らなくてはならない絆もあるのだ・・・。ついにここに、全員一致の無罪判決が出る!
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:このラストシーンでは、評議の行方が混沌とし、もうこのままでは評決不一致になるかもしれないという状況の中、勇次役の山崎君が彩子ちゃんを説得します。その説得に感動した裁判長の剣持さんが、思わず山崎君に握手を求めるという芝居をした事がありました。しかし思いっきり無視され、スゴスゴと手を引っ込める悲しそうな姿の剣持さんは、見ている者全員を、立っていられないほどの大爆笑の渦に陥れ、舞台監督の植木さんは椅子から転げ落ちてしまいました(爆)!
杉山彩子(主演):舞台やDVDを観て頂いた方なら分かると思いますが、私の演じた須藤真澄という役、実際の私より1オクターブ位高い声で、しかも張り付いたような心無いスマイル……。聞いているんだかいないんだか分からない受け答え。私にとってはとても不思議キャラでした。そして、この演じ方……とてつもなく目が痛いの!(だからDVD見てびっくりしたけど、物凄くまばたきが多いの)キーポイントのドライアイは、実は私の事です!(笑)
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:初めての裁判劇という事で、今まで使った事のない左脳を駆使し、本を書いてみました(笑)。証拠とか証言とか謎解きとか、自分が読んだり観たりするのは大好きだったので、一度書いてみたいなぁとは思ってたんだけど、でもやっぱり大変だった……。しかし!もんの凄く素晴らしいダンスシーンも出来上がったし、衣装もとてもセクシーな物を提供して頂いたし、芝居の評判も大層良かったし、終わってみれば何だか万々歳な舞台となりました!
杉山彩子(主演):本当に体力的にきつかったこの舞台!でもダンスシーンは見事でした。なんたって衣裳がもう…鼻血もの!最前列に座った友人達は、恥ずかしくて直視出来ないと語っていました(笑)。稽古場でも、初めての衣裳を着ての通し稽古の時は、男性陣の目がかつてない程輝いていたのを忘れることが出来ません。劇場入りしてから、何故だかダンス場当たりの時、客を装った男性キャスト達が上半身半裸で最前列に陣取り雄叫びをあげてました(爆)。