ストーリー
Chapter1
ブライダルプロデュース会社「天使のつばさ」社員の沢村瑞穂(杉山彩子)は、何故か今日とても機嫌がいい。それと言うのも、玉の輿に心血を注いできた、瑞穂の苦労の甲斐あって、ついに!大物政治家広田幸造の息子と付き合う事になったのだ!広田とのデートをアフター5に控えノリノリの瑞穂は、皆に自ら入れたコーヒーを振舞う。その日の夕方、外部スタッフのカメラマン・浅田晴彦(中村嘉夫)と、残業のため会社に残った倉沢あい(小林美貴)の2人。なぜかあいは浮かない顔をしていた。それを不思議そうに見つめる晴彦。
実はあいの将来の夢は漫画家になる事。しかし全くなにも進展しないままの毎日が続く。そんな時、晴彦が新人の登竜門でもある大きな賞を受賞したという話を聞く。夢に向ってどんどん進んでいく晴彦を羨ましく、妬む心を抑えきれないあい。と突然、あいは晴彦から今度の写真集のモデルを頼まれる。驚くあい。しかもそれはヌードだと言うのだ!
Chapter2
あいがモデルを頼まれたという事を聞き、おおはしゃぎの瑞穂と香(坂東留実)。あいがモデルを引き受ければ、自分達にもモデルのチャンスが回ってくるのではないかと思っている。そこへ結婚式のプロデュースを頼むため、高清水有子(高瀬ひとみ)と富塚金五郎(柴田直伸)が踊りながら登場!信じられないほどのアツアツぶりに、一同唖然…。
そこに化粧直しを終えた瑞穂がやってくる。途端、凍りつく瑞穂と有子。実は有子の父親は、大手運送会社の社長をしており、瑞穂の父は、有子の父の運転手をしていた。そのため有子と瑞穂は、同じ敷地内で暮していた幼馴染みのような存在だったのだ。
自らお嬢様だったように振舞っていた瑞穂。しかし本当のお嬢様は瑞穂ではなく有子だった。そして有子は驚くような事を話し出す。実は瑞穂は有子の昔の婚約者を奪い、そのままいなくなったと言うのだ!
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:このシーンの瑞穂ちゃんのメイクは本当に凄かった!台本上は、「物凄く濃いメイクをしている」というト書きなんですけど、やるなら徹底的にという事で、宝塚メイクを研究してメイクして貰ってました。とにかく物凄い隈取り状態だったので、皆に慣れて貰うために、結構早いうちの通し稽古から、メイクをして貰っていたような気がします。あとのシーンが突然シリアスになってしまうので、皆笑わないようにするのが大変だったかも…。
杉山彩子(「沢村瑞穂」役 ):この化粧…凄かった…。でも自分ではそうでもないかなと思っていたんだけど、舞台に登場した途端にお客さんがどよめくので、相当凄いんだなぁと自分でも認識した。でもね、メイクも新宿の舞台メイク専門店セイセイドーに出向いて、そこのお姉さんに宝塚メイクを教わったりして結構頑張ったのよ。ただ、出来上がるまでの失敗作を見ながら一緒に稽古をした共演者の皆さんは大変だったらしい。ふいちゃって台詞言えなくなってたもんね。
Chapter3
有子の一件があってから、全く会社に出てこなくなった瑞穂。ある日、街に号外が飛び交う。それは、瑞穂に結婚を申し込んでいた広田の息子と、人気女優の電撃結婚のニュースだった!その時瑞穂がびしょぬれの姿で現われる。心配する一同をよそに、明るく振舞う瑞穂。彼女は静かに自分の過去を語り始める。…有子が大好きだった。貧乏がコンプレックスだった私に、有子はいつも優しくしてくれた。…でもその優しさが憎かった。優しくされればされるほど自分が惨めになり、有子の顔が醜く歪んでいく所が見たいと思った。しかし、望んだ通りになった結果、自分はもっと惨めになっていた…そう話す瑞穂に、武士(原元太仁)は「コンプレックスは誰でも持ってる。人と比べちゃダメだ」と笑った。
ゆっくりと心が解けていく(はずの)瑞穂。しかし人間そう簡単に変わるはずもなく、武士の言った事を理解したんだか…の瑞穂は、より一層の玉の輿を目指すのだった!
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:この時の瑞穂ちゃんの衣装は、ブーツ以外全部私の私物でした。制作費が安いので、衣装代というものは殆ど出ず、皆自前を持ち寄りその中から決めます。私は衣装合わせが大好きで、結構早いうちから何回かやります。それをやる事によって、大体の役のイメージを固めたりするんですよねぇ。しかし早替えもあるので、役者さんの段取り状況と照らし合わせ、イメージはいいんだけど着替えづらいから却下、なんて事も随分あります。
杉山彩子(「沢村瑞穂」役 ):このシーン、独白の前に倒れるんだけど、一応そこで支えられる事になっている。ところがいざ最初に稽古してみると、いの一番に飛んでくるのは、今回のメインキャストの嘉夫くん(晴彦役)。本来なら武士役の原元さんが一番手じゃないといけないのにだ!嘉夫君は殺陣師でもあるから、身体が利くので機敏な動きが可能なのだが、今回は主役あいちゃんの相手役…。ストーリーに支障が出てしまう。一度稽古場で誰も間に合わなくて、独りぶっ倒れた日もあった…かなしー。
Chapter4
あいの母(水野まき)が突然会社に現われる。父の手術が決まったのだが、あいとは全く連絡が付かなくなっていたのだ。頑なに父に会う事を拒むあい。実はあいの父は、彼女が小学生の頃、広田幸造の秘書をしていた。その広田に贈賄疑惑が持ち上がった時、父は広田の身代わりとなり刑務所に行ったのだ。その事で激しいイジメにあうあい。どんなに父は悪くないと思っていても、イジメられているという事実は変えられない。次第にあいは、父を憎む事でしか、生きていく術を見つけられなくなっていた。そんなあいに、晴彦は優しく語りかける。「もう誰もあいちゃんをイジメない。だから言っていいんだ。悲しいなら悲しい。寂しいなら寂しいって」。その言葉が、頑ななあいの心に静かに浸透していった。
晴彦とあいの結婚式当日。母から、手術後しばらくしてから亡くなった父の手紙を受け取るあい。そこにはあいを心から愛する父の言葉が面々と綴られていた。
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:この芝居はラストシーンの父の手紙を、あいがウェディングドレス姿で読むというイメージが最初にあって、そこに行き着くように書いていきました。逆に言えば、このシーンを書きたくてこの芝居を書いたとも言える…。たまに「こんなラストが書きたい!」という動かしがたい衝動に駆られて書く事があります。素敵なラストは素敵な本の第一歩!と思うけど、毎回「これだっ!」と思うようなラストが思い浮かぶわけじゃない…そこが辛い…。
杉山彩子(「沢村瑞穂」役 ):あいちゃんの独白のシーンで、稽古中、長ぁ〜〜〜い台詞を忘れそうになると、時々美貴ちゃん(あいちゃん役)は、私の方を見て「助けて〜!彩子さん!」という視線を送っていた。夢野さんがダメだしで、瑞穂と出来てるみたいだから止めろと言った。どんなダメだしじゃい!と思ったが、そんな美貴ちゃんが可愛くて笑えた。ちなみに晴彦の方はまったく見なかった…(笑)。
Comment〜舞台裏秘話
夢野さくら:お金に執着しまくる、可愛く美しい女という存在を書きたくて、そこから生まれたのが沢村瑞穂という役です。この役は玉の輿に命を賭けているという設定で、瑞穂曰く「合コン」の事は「営業」と呼びます。物じゃなく、自分をガンガン売り込むって事ですね。彼女の営業力は素晴らしく、青年実業家リストというものを作っていて、凄い金持ちばかりが載っているらしい。彼女のこのリストを使えば、一財産儲ける事も夢ではないとか…。
杉山彩子(「沢村瑞穂」役 ):スパコンで演じた役の中でも、正統派の中では一番好きな作品!(異端派はNatural)でもこの冒頭シーンは、懐メロ中の懐メロ「てんとう虫のサンバ」をサンバを踊り乍ら、皆がバルコニーに出てくるタイミングに合わせて台詞を言わなくてはいけなかったので、随分沢山稽古しました。しかしこの芝居、かわいい子がいっぱい出てたから、本当に華やかで、楽しかった。だって、お手伝いに来てくれた土屋先輩(さゆり)なんて、あいちゃん 役の小林美貴ちゃんのまわりから離れなかったもんね。